4月1日に浜松市のHPで「浜松市風力発電ゾーニング計画書及びゾーニングマップ」が公表され、平成29年度から2ヶ年にわたるゾーニング事業の結果が明らかになりました。
ゾーニングをする事によって、風力発電に適したエリア(地区)を見つけ出すという事業だったわけですが、前回の投稿でも触れたように、現時点では陸上、洋上共に風力発電計画を進めるにあたって問題がないとされる「C」エリア(推進エリアという事です)は存在していません。
このエリア設定については、「ゾーニング計画資料編」で次の様に述べられています。
候補地のうち、立地には課題があり調整が必要であるが、課題をクリアできれば、立地が可能となり得るエリアをBエリア、現時点で、立地に重大な課題は認められず、地元の調整に大きな支障が見込まれないエリアをCエリアと設定した。
今回のゾーニング検討の結果、浜松市内では現時点でCエリアに該当する地区はなく、すべてBエリアとした。
浜松市にはこれも「一つの重要な結果」として受け止めて欲しいと思います。
「陸上風力ゾーニング地区別カルテ(No.14)」が当自治会に隣接する地区となります。資料によれば、風況や稜線など地形的判断から、ここには2000kW級風車「8基」を建てる事が出来るとしています。
そして地区の課題として「水源」「騒音・低周波」「景観」などについて、さらに地域住民の意見を加えた形で下記のようにまとめられています。
熊地区も「過疎化」対策として積極的に移住者を迎える事業を行っています。移住希望者にとって魅力的な地区であるためには、豊かな自然と環境は絶対条件です。
風力発電施設が近くにある地区に、移住してくる人がいるでしょうか?
浜松市にはこの問題について、もっと真剣に考えてもらいたいと思います。
■ゾーニング結果の活用について
今回のこのゾーニング結果を踏まえて、現在事業が一時停止になっている自然電力株式会社がどのような対応をしてくるのかはまだ不透明です。報告会にも参加していなかったようで、浜松市にも現時点ではゾーニングに関しての問い合わせ等はないそうです。
そしてもうひとつ重要なポイントとなるのが、このゾーニング結果が将来にわたってどのような影響をもたらすのかという点です。
浜松市の資料には、今回のゾーニング結果の活用について次の様に述べられています。
4.2 ゾーニング計画の活用
本ゾーニング計画は、市内における無秩序な風力発電の開発を回避し、適正な導入を誘導するため、風力発電に関する地域特性や地域課題、地域住民の意向等を示したものである。発電事業者が、市内での風力発電を検討する際に、本ゾーニング計画を参考に発電事業を立案することにより、環境保全や社会条件、さらには、地域の意向に即した計画となり、環境紛争の回避につながる。(傍線当ブログ)
(中略)
浜松市では、市内において風力発電の施設及び施設建設に伴う送電線等の付帯設備の建設を行う事業者が遵守すべき事項や調整手順を明らかにした「浜松市風力発電に関するガイドライン」を平成 18(2006)年に策定し運用を行っている。住宅等からの離隔距離の設定等、今回のゾーニング結果を「浜松市風力発電に関するガイドライン」に反映させる。(傍線当ブログ)
今後の風力発電事業に対する市の対応としては、本ゾーニング計画を踏まえ、浜松市風力発電に関するガイドラインに基づき、発電事業者との調整を進めることにより、環境と住民生活に配慮した、地域と調和の図られた風力発電の導入を促進する。(傍線当ブログ)
つまり事業者があらたな風力発電計画を検討する際には、今回のゾーニング結果を十分考慮する必要があり、浜松市としてもゾーニング計画や改訂される風力発電に関するガイドラインに基づいて事業者と調整を行うとされています。
しかしここで注意しなければいけないのは、今回のゾーニング計画も浜松市のガイドラインにも「法的拘束力」はありません。
つまり、事業者がこれらを無視して事業計画を検討する可能性を排除できません。
実際にゾーニング事業を行った長崎県の西海市では、風力発電を推進するエリアではないところに、それを承知で事業者が風力発電計画を立て、反対運動が起こっています。
「西海市で風力発電反対の団体設立。長崎県内」からの引用です。
今回の風力発電所の建設計画は「適地エリア」に位置していますが、「候補エリア」や「事業推進エリア」には入っておらず、西海市は、「計画されている場所は市が建設を推進する地域ではない」としています。
西海市では、「風力発電を地域振興につなげたい」としていますが、発電所の建設にあたっては「住民の意見を尊重していく」としています。西海市のゾーニング計画については下記リンクから参照できます。
「風力発電等に係るゾーニング計画を作成しました!」(西海市のHPから)
もし同じような事が浜松市で起きたら、浜松市はどのような対応をするのでしょうか? 「法的拘束力」はないにしても、ゾーニング計画を公表した責任を重く受け止め、事業者にきちんと説明し、指導していく姿勢を示してもらいたいと思います。
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紙漉きの原料となるミツマタの可愛らしい花です。 |