2018年12月24日月曜日

ゾーニング事業を巡る、知っておくべき「事実」その②

12月5日(水)の夜に地元のくまふれあいセンターで、現在浜松市が行っている「風力発電等に係るゾーニング導入可能性検討モデル事業」によって抽出された、熊地区の風力発電の候補地となりうるエリアについての「調査結果報告会」が開かれました。

現地調査と報告を行ったのは、浜松市から今回のゾーニング調査の委託を受けているアジア航測株式会社(以下アジア航測)です。

調査報告会開催の通知

報告の内容は大きく次の3点でした。
(1)7月2日に行われた熊地区地域ヒアリングの内容
(2)現地調査報告結果
  • 地すべり・崩落地に関する現地調査報告(8月2日〜3日)
  • 水源に関する現地調査報告(8月2日〜3日および8月7日)
  • 景観に関する現地調査報告(8月2日〜3日)
(3)ゾーニングに係わる今後の方針とスケジュールについて


まず7月2日に行われたヒアリングの問題点について述べたいと思います。
ヒアリングの目的は、風力発電事業への疑問や心配点などについての意見聴取と、(2)の現地調査を行うための情報の収集となります。

しかしながら7月2日に行われたヒアリングは、熊地区の自治会長のみの出席で、ヒアリング「当日」に資料を配付し、ゾーニングについての説明を行い、その場で現地調査のための情報を集めるというやり方でした。これでは調査に十分な情報を集められるはずがありません。

事前に各自治会長に資料を配付し、ヒアリングの意図を説明し、地元住民からの情報を集める時間を設けてからヒアリングを行うべきでした。

上記の調査期間を見ればわかるように、アジア航測は8月2日と3日の二日間で、この広いエリアの調査を完了した事になっています。地元の詳しい人のガイドなしに、たった二日間で地すべりや水源の調査などを行った結果、報告会で数多くの問題点が指摘される事になります。

熊地区の風力発電検討エリア(配布された資料から)

まずアジア航測は、ヒアリングで示された20数カ所の水源の内の一部(数カ所)しか調査していなかったうえに、その水源がそれぞれの集落にとって重要な水源なのかどうかも確認していませんでした。

また柴・沢丸の「簡易水道」(これも間違っていて、本当は小規模水道施設です。簡易水道と小規模水道施設では施設管理者が違うので、明確に分けないといけません)の水源が、本当は地下水であるにも関わらず、何故か夏に子供たちが遊ぶプールとなっていて、驚いたというか呆れてしまいました。また地下水の水源については「調査対象外」として、調査報告ではその影響については触れられていません。

プールが水道水源に!?(配布された資料から)

そして水源に関しての調査結果として示されたのが、「尾根付近の地形改変による水源への影響は比較的少ないと想定」というものでした。杜撰ともいえる調査から導き出されたこの結果について、どう納得しろというのでしょうか?

結局報告会の質疑応答の中で、アジア航測の担当者も「水源の調査に関しては不十分でした」と認めざるをえなくなりました(後日、再度水源を地元の代表者らとともに確認し、調査しなおしました)。

また景観についての現地調査も、広い熊地区でたった1カ所(!)を調査(熊小学校)したのみで、その選定理由が「国土地理院の地図から、この地区の中心的存在と判断した」からだそうです。

熊地区には、環境省の交付事業として整備された東海自然歩道や縄文時代中期の遺跡などもあり、また地元の人たちが大事にしている風景が沢山あります。それらを知ろうともしないで調査報告を「平然と」出してくる姿勢が信じられません。

アジア航測は自社で保有する航空機と最新鋭のセンサーによる空間情報の収集・解析を専門としていて、環境省が行っている風力発電に係わるゾーニング調査についても全国の複数の自治体から調査を委託されています。にもかかわらず、この現地調査の杜撰さはどういう事なのでしょうか?

今回の現地調査報告を聞いた限りでは、アジア航測が行った調査結果を信用する事は到底出来ません。

もちろんゾーニングに関する調査では、風力発電事業にともなう環境影響評価(環境アセスメント)で行われるような詳細な調査をする必要がない事は理解しています。しかしながらそのベースともなる調査がここまで杜撰では、ゾーニングそのものの「信頼性」にも関わってくるのではないでしょうか?

そしてもう一つの重要なポイントとなる、風力発電に適したエリアを抽出する基準、具体的には風車から住居までの距離の設定についても、今回の報告会では大きな問題となりました。

このエリア抽出の問題点については、次回の投稿で詳しく触れたいと思います。

◎写真で一幅◎
紅葉の中、年末に向けて道路清掃をしました

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