2018年6月16日土曜日

風力発電事業計画のきっかけを巡る、不都合な「事実」

今回の(仮称)浜松市天竜区熊風力発電事業(以下事業)は、地元林業企業が自然電力株式会社(以下事業者)に声をかけたのがきっかけでした。

5月19日の投稿「風力発電事業の経緯」で今回の事業の経緯をまとめましたが、2017年4月5日に、事業者は浜松市に環境影響評価の手続に入る旨を伝えました。しかし、何度も繰り返しますが、この時点で、熊連合自治会に対して事業の説明や聞き取り調査は行われていませんでした。

どうして事業者は、一方的に事業に関する手続を進めたのでしょうか?

事業者は地元林業企業の以下の様な「説明」を受けて、環境影響評価の手続を開始したと述べています。(注1)

「最終的な地元合意は環境影響次第だが、環境影響評価を含む事業検討については熊地区連合自治会は前向きに考えてくれるのではないか」

しかし地元林業企業のこの「説明」が、結果として、様々な問題を引き起こす事になります。

① この「説明」自体が、なんら裏付けのない、地元林業企業の見解にすぎなかった
② 事業者は環境影響評価の手続に入るまでに十分な時間があったにも関わらず、この「説明」内容を確かめる事を怠った
③ 事業者がこの「説明」を浜松市に対しても行い、浜松市もそれを信用してしまった
④ 事業者は浜松市の環境影響評価審査会でも同様の「説明」を行った

もし事業者が環境影響評価手続に入る前に、熊連合自治会や事業予定区域に隣接する自治会に対して、事前の事業説明や聞き取りを行っていれば、その「説明」が熊地区の実情にそぐわないものである事がすぐに分かったはずです。

そうしていれば、このようなブログを立ち上げることもなく、双方にとって別のよりよい協力関係を築けたかも知れません。

しかし、実際にはその「説明」をもとに事業者は事業の手続を進めてしまいました。
嘘とまでは言いませんが、このような正しくない「説明」によって、何十億円もの予算が組まれ事業が進められてしまった事に、呆れるというよりも、恐ろしさを感じます。

この「説明」によって、上に述べた④の審査会ではどうのような事が起きたのでしょうか?

・平成29年度第一回環境影響評価審査会(平成28年6月6日開催)での事業者発言(会議録より

事業予定地周辺の林業企業が声をかけてきた経緯もあり、スクリーニングの結果もよかったため、今回は内陸部で計画した。」

「地元の反対などでできなくなる可能性もあるとは思っているが、調査や地元聞き取り等も行った上で、このエリアでは可能性があるとして設定している。

実際には地元聞き取り等を行っていなかったにもかかわらず、このような発言をしていた事自体が信じられません。

その後方法書の段階に入ってから、私たち自治会をはじめ、地元のNPOや個人の方々から数多くの反対や、事業を不安視する意見が提出される事になります。
その結果、審査会委員から、事業者の説明に反して反対の意見が数多く寄せられている事についての意見が提出されます。

・平成29年度第六回環境影響評価審査会に提出された「資料1:(仮称)浜松市天竜区熊風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する委員意見及び事業者見解

「2017年6月頃(第1 回審査会)に同風力発電事業のご説明をお聞きしたとき、地元住民からの要望(前向きな考え)もあって風力発電所を設置する、とのご発言があったと記憶しております。ところが、現状、特に地域住民の方々からのご意見を拝見していますと、温度差が発生しているように思います。その辺りの経緯をお聞きしたい。」

それに対する事業者見解は、次のようなものでした。

方法書住民説明会を実施したことで、本事業を知る方が増え、さらに、事業がより具体化された説明となったため、環境影響に対して懸念を示される方が多数出てきたものと考えております。弊社としては、引き続き定期的 に地域の方々との対話の場を持ち、ご懸念の点について、丁寧に平易で分かりやすい図表等を用いてご説明し、頂戴したご意見等を勘案して調査内容や事業計画を修正しながら、ご理解を頂きたいと考えております。」

 語るに落ちるとはこのことです。

事前に、地元聞き取りや説明等を行っていれば、このようなことになるはずがありません。正しくない情報を元に審査会の審議が進められてしまった面があることを、事業者は重く受け止めるべきだと考えます。

また今回、環境影響評価審査会の会議録を読み返していて気がついたのですが、2017年9月29日に、事業者は経済産業省から「再生可能エネルギー発電事業計画の認定」を受けています。しかし、そのことを審査会で報告した形跡がありません。浜松市には報告していなかったのでしょうか? とても不自然に思えます(この認定に関する詳しい内容はこちらの投稿をご覧下さい)。

事業者の「説明」が及ぼした影響は、環境影響評価審査会だけではありません。
浜松市が進めている風力発電に関するゾーニング事業にも影響を与え、浜松市に誤った判断をさせてしまう事になります。

次回の投稿では、今回の風力発電事業とゾーニング事業との関係を明らかにしたいと思います。

(注1:平成30年3月14日付けの自然電力株式会社から柴・沢丸自治会に対しての回答書から)

◎写真で一服
今年の初日の出の写真です。
"展望台"からの眺望は本当に素敵です。




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